―まずBohemian Quarter結成のきっかけは ?
Jin Nakamura(以下Jin):5~6年前に松井氏からお誘いを受けたのがきっかけです。実を言うと、僕はそれまで《ポエトリーリーディング》について詳しくは知らなかったんです。ただ、作曲家ではありながら歌の中の“ことば”は大切にしてきましたし、「ただ詩を朗読―リーディング―するだけではなく、そこに音楽を融合させた“ポエトリーミュージック”という新しい音楽」という企画に大変興味を持ちました。
―企画から制作へと、行程は順調に ?
Jin:興味は持ったものの、正直、どういった作品になるか、まったく見当がつかなかったですね。僕らが通常行っている音楽制作というのは、歌うメロディに対してサウンドを構築していきますけど、“ポエトリーミュージック”の場合は歌がない中で、サウンドを構築していくことになる。それをお芝居や映画のサウンド・トラックのように考えてしまうと、いざアルバムになった時に単純なBGMのような音楽になってしまう。それでは面白くないし、かといって、リーディングを邪魔するようなメロディを詰め込み過ぎても、今度は“詞”を邪魔してしまう。だからBGMとインストゥルメンタルのふたつの要素を持ち合わせて、なおかつ
“詞―ことばー”と“音楽”の相乗効果の得られるものにしたいというのが、当初からの課題でもあり、今もその実験を続けている段階です。
―作品は、詞と曲どちらが先に ?
Jin:詞に音楽を書く場合と、僕がイメージする音楽に松井氏が詞を書く場合もあります。詞が先にある場合は、“詞―ことばー”を見て、そこからイメージを膨らませていきます。短いメロディをいくつか考えて、それを繋ぎ合わせたり、僕が興味を持っている音をそこに当てはめてみたり。いくつかのパターンの中から、サウンドを選んでいく感じです。
―作業は、2人でスタジオでされるのですか?
Jin:いえ、それは別々です。ある日、突然詞が送られてくることもあります。(笑)ただ、曲を先に書く場合でも、松井氏から何かしらのコンセプトの提示があったり、お互いがある程度共通のイメージを持って1曲1曲を仕上げていきます。
―詞と曲、どちらが先のほうが書きやすいということがあるのでしょうか?
Jin:実際は朗読をしてみて、バランスを考えながら、メロディを変えることもあります。でも、大切なことは、出来上がったときに“詞”と“曲”が“お互いを高め合える作品になっているかなので、出来上がった時の音楽という結果を大切にしています。
―制作上、リーディングと歌とで、なにか違いは?
Jin:ひとつの作品を仕上げるという、大きな意味では一緒だと思っています。ただ、リーディングの場合は、発声の仕方の選択肢がとても多いんですね。 すごく小さな声で囁くようにしたり、話すスピードを変えたり。その中で、どの方法がいいのかを選べることは、歌より自由である分、難しいところでもあり、楽しいところでもありますね。歌のある曲を書く時には、歌う人の持っている声やキー、いわゆる能力やポテンシャルという制限があります。でも、“ポエトリーミュージック”の曲そのものはインストゥルメンタルなので、メロディは自分が思うままに選ぶことができるんです。でも、実際にリーディングをのせてみたら、メロディが歌いすぎていると感じて少し変えてみたりしますね。
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